研究組織

A01 対話継続関係維持研究グループ

ターンテイキングの起源:発達認知神経科学的研究

研究代表者
開 一夫(東京大学 大学院 総合文化研究科)
専門分野:発達科学
研究役割分担:実証的研究のデザイン・実施・分析

本研究では発達科学的手法と認知神経科学手法、先端計測技術を統合的に用いることで、ターンテイキングの発達的変遷を明らかにする。具体的には、モーションキャプチャ装置、高速度カメラといった先端計測技術を駆使することで乳幼児-養育者間(あるいは、乳幼児-人工物間、養育者-人工物間)の相互作用を精緻に計測し、認知神経科学で用いられているHD-EEG(高密度脳波計)による脳機能計測法を発達科学の縦断的実験デザインとして組み込むことで、行動レベルの研究だけではなく、ターンテイキングの神経基盤も明らかにする。具体的には、「ターンテイキングの発達的起源」、「ターンテイキングと言語習得との関連性」、「人工的ターンテイキングの可能性」の3点を明らかにすることを目標とする。

本申請課題は、計画班A01班が掲げる目標「対話内容を完全に理解できていない場合も、対話を継続できる対話能力を実現」する上で大きな貢献が期待できる。その根拠は、本研究が母子間の非言語的なインタラクションに焦点を当てているためである。成人を対象としたターンテイキングの研究では、言語的能力と非言語的能力が複雑に絡み合っているため、これらを分離することができない。母子間の相互作用を研究することで、対話のリズムや抑揚といった対話の非言語的側面を浮き彫りにすることができる。対話における問題発生時における表情表出や脳活動変化が特定できれば、人工物−人間間の「対話破綻」を未然に防ぐことが期待できる。