A04班研究代表者 新保史生 登壇のご報告
セミナー「RCLIPセミナー(ブラジルにおける個人情報保護法の施行)」にA04班研究代表者 新保史生が登壇し,本プロジェクトの成果を含む報告を行いました.
開催日時: 2021年5月26日(水) 20時00分~21時30分
開催方法: オンライン(ZOOM Webinar)
テーマ: ブラジルにおける個人情報保護法の施行
司 会: カラペト・ホベルト(早稲田大学法学研究科講師)
報告者: ミリアン・ウィマー(ブラジリア公法研究所(IDP)特任教授・ブラジル個人情報保護委員会(ANPD)理事)
新保史生(慶應義塾大学総合政策学部教授)
主 催: 早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)
共 催: 早稲田大学法学部
概要
2018年8月14日にブラジルの個人情報保護法(Lei Geral de Proteção de Dados Pessoais、2018年法13709号。「LGPD」という。)が成立した。LGPD は、個人の自由及びプライバシーに関する基本的権利の保護等を目的として、個人情報の処理に関する活動を定めて いる。全体を通して EU 一般データ保護規則(GDPR)の影響を強く受けているが、LGPD の独自の規定も多い。
LGPDの監督機関として、Autoridade Nacional de Proteção de Dados(以下「ANPD」という)という機関が新たに設立された。ANPDの詳細な規制(構成員の数や任期等)が2020年8月以降に継続的に決定されてきている。それに、2021年に入ってから、ANPDは複数のガイドライン(たとえば、個人情報漏えい等の報告等に関するガイドライン)を発行し、さらなる規制をパブリックコメントのために公表している。LGPD における行政上の制裁に関する規定は 2021 年 8 月 1 日から施行され、違反の最高罰金は最大5,000万レアル(約9憶5000万円)または年収の2%となった。
LGPDがブラジル国外の企業であっても適用されることに照らして、ブラジルの総人口は世界第5位を占めており、日本とブラジルの関係が深いから、LGPDに関する課題は日本においても検討する価値が高い課題である。そして、ANPDの活動を継続的に注意すべきといえる。
また、日本の個人情報保護法が改正され2022年4月1日に施行予定である。ブラジルの個人情報保護法制定において課題となった問題も日本では既に議論がなされている。たとえば、改正個人情報保護法22条の2に新たに「漏えい等の報告等」の規定が設けられた。また、法人重科として罰金刑の最高額が1億円以下に引き上げられた。さらに、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」では、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法の3本の法律を1本の法律に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度についても統合後の法律において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化する方向性が示されている。
グローバルな市場の中、両国においても個人情報の保護が大きな課題として取り上げられ、日本とブラジルの個人情報の保護の問題を比較することによって有益な議論ができる。
本セミナーではウィマー先生が ANPD の設立および LGPD の施行について説明する。新保教授が近年の日本法の改正を解説する。パネリストの講演後でディスカッションと質疑応答が行われる。
※ 本セミナーの詳細は、早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)ウェブサイトをご覧ください。